2012年01月17日

ちぃちゃん

「なに  遠く見てんだ?」
「元気ないなぁ? だいじょうぶかぁ? 」


って・・・  だから 参加しないって  言ったのに・・・


今年しょっぱなの模合だから必ず顔出せっ!って言うから




どうせ寝れないなら
喧噪の中に身をおけば  少しは気も紛れるかなぁ
なんて   思ったけど



「はじけて ぱーっと行こう!」って引っ張られて
無理やり二軒目

しかも  前島の行きつけのスナック?

あたしたちの年になると   男は  そんな行きつけのスナック 当たり前か・・・


「うわ~  きれいな方! どこのお店で呑んできたの?」

スナック嬢は  女にも媚びを売ってくれる


はじけて  カラオケを歌いまくる男たち
どっちが はじけたいのか   わかんない

まっ 彼らなりの気の使い方かな




こういうとこ来るの  何十年ぶりだろう?



22の頃
昼間のOLのかたわら 働いていた松山のクラブ

バブリーなあの頃の松山は
大人の社交場だったな   今はすっかり様変わりしてるけど

会員制のクラブで、会社役員やら議員やら
そんな紳士的に見える人たちが常連だったけど
まっ みかけだけだけど

その中で 唯一  女性の常連さんがいて
名前は「ちーちゃん」
本名知らないけど
ママも  同伴の客も「ちーちゃん」と呼んでた
小柄できさくで 人懐っこい笑顔
いつも商談の後なのか ビシッとスーツ姿で
数名の殿方と来て  仕事がらみの難しい話しをして
決まって最後は 「ちーちゃん」のお立ち台だったな
ホステス以上に その場を盛り上げるちーちゃん


梓みちよの 「メランコリー」 が18番で
ソファの上に立って 楽しそうに歌ってた
ちーちゃんだから 許されたんだろうな


そんなちーちゃんが
初めて一人で来て、カウンターに座って
サザンの 「いとしのエリー」 を  しんみり 歌ってた
どこか 遠くを見るようにして
いつもの元気なちーちゃんとは まるで別人で
20年以上たった今でも はっきり覚えてる
二十歳そこらのあたしでも 胸がきゅっとした



あとから  ママから聞かされた

ちーちゃん、最愛の旦那様が病死して
専業主婦だったのに 幼い子を抱えながら
旦那様の経営する
建設会社の社長になったんだと

いつも一緒にくる殿方は そのサポーター
右も左もわからず飛び込んだ男社会の建設業界
旦那様をよく知る方々が力添えしてくれているそう


「いとしのエリー」


亡くなったご主人を思いながら 歌っていたのかな・・・
それとも
ご主人が よく歌ってくれてたのかな・・・


最愛の人が届かぬところに いってしまうって
あの頃のあたしは わかったつもりで

じつは わかってなかったな


顔をみることも
声をきくことも
触れることも
抱きしめることも  全部 叶わないのに
思い出だけが 心をしばっていく

いつまでも





 「死」 を受け入れたのはいつだろう・・・


思いっきり  泣いたのは   
どのくらいたってから だろう


懐かしい思い出になったのは  いつだろう














同じカテゴリー(見つめる)の記事
刹那
刹那(2013-10-14 22:53)

ハリ
ハリ(2013-04-17 16:40)

道未知
道未知(2013-02-17 02:17)

☆4つ
☆4つ(2012-12-14 03:01)

22才
22才(2012-11-29 23:03)

人魚姫
人魚姫(2012-10-06 07:16)


Posted by 宇風想 at 04:33│Comments(0)見つめる
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。